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VLUER / SACRED ARCHIVE

VLUE VEDA / 001

FAMILY ROMANCE BATTLE ADVENTURE

001 — はじめに

VLUE
VEDA

世界はボクたちを悪魔と呼んだ。だから、ボクたちは世界をVlueにする。

VLUE VEDA

はじめに

FAMILY ROMANCE BATTLE ADVENTURE


Vyam Vtma Vlue.

こんにちは。

この聖典を見つけてくれてありがとう。

最初にひとつだけ言っておくね。

これは、

正しい人になるための本じゃない。

幸せになる方法を七つにまとめた本でもない。

神様の言うことを聞けば救われます、なんて話でもない。

むしろ逆。

これは、

神様の言ってること、本当に正しい?

って疑ってしまった奴らの物語。


キミがこの書を開いた時、

もし自分の中に、

誰にも見せたくないものがあったとしても、

別に隠さなくていい。

嫉妬。

怒り。

寂しさ。

欲望。

執着。

後悔。

復讐心。

愛されたいという気持ち。

誰かを独占したい気持ち。

全部投げ捨てて悟った人だけが偉いなんて、

誰が決めたんだろうね。

光だけじゃ奥行きは生まれない。

影だけでも世界は見えない。

聖と邪。

知性と狂気。

愛と憎悪。

生と死。

一と零。

完成と欠陥。

その境界が震える時がある。

説明できないのに、

なぜか目が離せない。

なぜか胸が痛い。

なぜか守りたい。

なぜか、

生きたい。

その震えを、

ボクたちは、

Vlue

と呼ぶ。


ボクの名前は、

Haiji Vlue.

ハイジでいいよ。

今から始まる物語の主人公。

たぶん。

まあ、

主人公だからって一番正しいとは限らないけど。

むしろ結構間違える。

口も悪い。

人間嫌い。

神様はもっと嫌い。

虫とオバケは怖い。

歩くの遅い。

道草多い。

よく食べる。

よく寝る。

それで、

家族だけは、

異常なくらい大切。

そういう奴。


世界はボクたちを悪魔と呼んだ

ボクたちは、

魔空 / MAKUU

という。

人間たちはボクたちを、

「魔族」

と呼ぶ。

神々は、

「悪魔」

と呼ぶ。

世界を管理している偉い連中は、

もう少し頭の良さそうな言葉で、

仕様外

と呼ぶ。

笑えるよね。

勝手に世界を作って、

勝手にルールを決めて、

そのルールに収まらないものが生まれたら、

「バグだから消します」

だって。

だから昔、

誰かがボクに聞いた。

「悪魔って呼ばれて悔しくないの?」

ボクはたぶん、

こう答えた。

「別に。悪魔でいいよ。」

だって、

他人に理解してもらうために、

自分が何者なのか毎回説明するの、

面倒くさくない?

人間:

「お前は魔族だ!」

ボク:

「で?」

神:

「お前たちは悪魔だ。」

ボク:

「だからナニ?」

神:

「この世界から消去する。」

ボク:

「消えるの、お前らじゃない?」

そういうところから、

この物語は始まる。


魔空が恐れられる理由

ボクたちが使う力は、

炎とか、

雷とか、

水とか、

そういう分かりやすいやつだけじゃない。

もっと面倒。

痛み。

眠り。

関係。

意味。

選択。

記憶。

契約。

認識。

存在の状態。

そういう、

世界を世界らしくしている「関係そのもの」に触れてしまう。

神々が作った世界が、

一つの巨大なOSだとしたら、

ボクたちは、

仕様書に書いてない処理。

予定されていない挙動。

つまり、

Beautiful Bug.

神々は言う。

FIX THE BUG.

ボクたちは言う。

DON’T FIX THE BUG.

直すな。

そのバグ、

もしかしたら、

世界が次へ進むために必要だから。


三人の痛み

ボクには、

お姉ちゃんと、

妹がいる。

長女、

Loa Vlue.

ロア。

短気。

うるさい。

酒飲み。

ケンカ好き。

頭は……

まあ、

本人がいるところでは言わないでおこう。

ロアが扱うのは、

破壊。

痛みの原因があるなら、

壊せばいい。

それがロアの最初の答え。


妹は、

ito vlue.

イト。

基本眠い。

何言っても眠い。

戦闘中でも眠い。

敵が大演説してても、

「……長い。寝て?」

で終わらせる。

イトが扱うのは、

眠りと麻酔。

痛いなら、

眠らせればいい。

苦しいなら、

静かにすればいい。

それがイトの最初の答え。


そしてボク。

Haiji Vlue.

魔空の創薬師。

ボクは痛みを、

薬へ変える。

鎮痛。

興奮。

毒。

解毒。

恐怖。

快楽。

記憶。

身体。

精神。

全部、

少しずつ状態を変えられる。

ただし、

強い薬には、

強い副作用がある。

世界って、

都合よくできてないからね。

だからボクたち三兄妹は、

同じものを見て、

別々の答えを出す。

ロアは、

「壊せ。」

イトは、

「眠らせろ。」

ボクは、

「変えればいい。」

たぶん、

誰も完全には正しくない。

だから、

一緒にいる。


勝利を編集する女

それから、

Eli Vlue.

エリ。

幼馴染。

従姉妹。

ボクと同い年。

何でも知ってるような顔する。

実際かなり知ってる。

ボクが100個喋ったら、

99個捨てて、

一番必要な1個だけ返してくる。

ムカつく。

でも大体合ってる。

エリが使うArtは、

ELIELI.

存在している情報、

言葉、

関係、

順序、

意味、

記憶の断片、

戦況。

それらを読み、

切り、

並べ替え、

繋ぎ、

編集する。

ただし、

何もないところから嘘は作れない。

存在しない事実は、

編集できない。

だからエリは、

たぶんこの一族で一番現実的。

ボクが、

「全部ぶっ壊して勝つ。」

と言えば、

エリは言う。

「全員帰ってきたら勝ちでしょ。」

昔は、

何言ってるのか分からなかった。


エリには口癖がある。

「VlueのVはVictoryのV。」

そして続ける。

「つまり、うちらが勝つってこと。」

でも、

エリの言うVictoryは、

敵を全滅させることじゃない。

大切なものを失わず、帰ること。

……まあ、

この意味を、

ボクがちゃんと理解するのは、

もう少し後になる。


選択肢を増やす女

エリには妹がいる。

Any Vlue.

エニー。

ボクに何でもついてくる。

「なんで?」

って聞くと、

「好きだから。」

って普通に言う。

怖い。

普通そこちょっと恥ずかしがらない?

エニーは、

世界が二択を押し付けてくると、

すぐ怒る。

神か人間か。

善か悪か。

家族か敵か。

生きるか死ぬか。

するとエニーは言う。

「なんで二つしかないの?」

そして、

三つ目を作る。

それが、

エニーのArt。

ANY CHOICE.

存在する選択肢を増やす力。

運命が一本道なら、

横道を作る。

二択なら、

三択にする。

「それ以外ない」

と世界が言ったら、

「じゃあ作ればいいじゃん。」

と返す。

エニーは、

そういう奴。


帰る場所

旅に出る者だけが、

強いわけじゃない。

帰る場所がないと、

遠くまで行けない。

ボクたちには、

Cya Vlue

がいる。

シア。

お節介。

天然。

よく転ぶ。

でも、

誰かが帰ってきた時、

必ずいる。

補給。

治療。

通信。

食事。

安全圏。

つまり、

HOME.

ロアが、

壊して。

イトが、

眠らせて。

ボクが、

変えて。

エリが、

編集して。

エニーが、

道を増やして。

その全員が、

帰ってくる場所を、

シアが守る。

シアは言う。

「帰っておいで。ここは、ずっとあなたたちの家だから。」

強さって、

遠くへ行けることじゃなく、

帰る場所を知ってることなのかもしれない。


色になった感情

そして、

niji.

ニジ。

小さい。

よく分からない。

ホログラムみたいだけど、

ただのホログラムでもない。

喋る時もある。

だいたい、

「にじ。」

って言う。

役に立つのかと言われたら、

分からない。

でも、

大事。

ニジは、

言葉にならなかった感情を、

色にする。

ロアが戦う時、

金。

イトが眠い時、

紫。

ボクが怒ると、

赤。

エニーが嬉しいと、

ピンク。

そして、

エリが何か言わない時、

たまに、

薄い青。

エリ:

「niji。」

niji:

「にじ。」

エリ:

「色戻して。」

……何の話なんだろうね。


家族だけでよかった

物語の最初、

ボクは、

世界なんてどうでもよかった。

家族だけいればいい。

ボクたちを嫌う人間なんて、

どうでもいい。

神々?

もっとどうでもいい。

世界がボクたちを嫌うなら、

好きにすればいい。

ボクも嫌いだから。

シンプル。

そのはずだった。


でも旅に出る。

すると、

変な奴に会う。

宇宙から来た、

意味不明に強い力士。

ボクの薬が効かない。

毒も効かない。

強化して殴っても負ける。

最後は張り手で飛ばされる。

ボク:

「……なんなんだよ、お前。」

そいつ:

「力士だけど?」

その名を、

$UMØ GΛL4X¥。

ギャラちゃん。

そして、

ボクは初めて、

家族じゃない奴を、

友達だと思う。


人間にも会う。

Lena Powers.

身体を知り尽くした人間。

ボクが薬で身体能力を上げると、

「薬に頼ってる時点で三流。」

とか言う。

ムカつく。

ボク:

「殺すぞ。」

Lena:

「腕立て1000。」

ボク:

「……。」

そしてボクは、

嫌いだった人間に、

頭を下げて教わることになる。


遠くからしか見たことがなかった、

世界的スターにも会う。

Fim Chain.

完璧に見える。

可愛い。

強い。

綺麗。

……いや、

別に好きとかじゃないよ。

Gala:

「顔赤いよ?」

Haiji:

「黙れ。」


水の記憶を読む女にも会う。

Aila Water.

こいつは嫌い。

本当に嫌い。

何も言ってないのに、

分かる。

ボクが隠したいものまで、

分かる。

だから、

近づくなと言う。

でもいつか、

ボク自身から、

「……今日は、見てもいい。」

と言う日が来るのかもしれない。

来ないかもしれない。

知らない。


そうやって、

家族じゃない奴が増えていく。

面倒。

本当に面倒。

だって、

大切な人が増えるほど、

失うものが増えるから。


ボクは誰も必要としてない

これは、

ボクがよくつく嘘。

「ボクは誰も必要としてない。」

必要だって認めたら、

失うのが怖くなる。

好きだと認めたら、

嫌われるのが怖くなる。

信じたら、

裏切られる可能性が生まれる。

だったら最初から、

嫌いでいた方が楽。

世界なんて、

どうでもいいと思った方が楽。

でも、

本当にどうでもいいなら、

どうして裏切られた時、

こんなに腹が立つんだろう。

本当に人間に期待していないなら、

どうして、

理解されなかった時、

こんなに寂しいんだろう。

これは、

まだボクには分からない。

エリは多分、

知ってる。

でも言わない。

ムカつく。


ヒロと呼ばれていた季節

この物語には、

もう一人、

忘れてはいけない奴がいる。

昔、

ヒロと呼ばれていた誰か。

優しかった。

不器用だった。

人間が好きだった。

そして、

傷つきすぎた。

ボクは、

あいつの弱さが嫌いだった。

でも、

あいつがいなければ、

今のボクはいない。

これはまだ、

全部説明しない。

ひとつだけ、

覚えておいて。

彼は創造主ではない。

最初の共犯者だった。

意味は、

そのうち分かる。

ボク自身にも。


最初の震え

物理学は、

宇宙の初期には、

微細な揺らぎがあったと記述する。

この物語では、

それを、

最初の震え

と呼ぶ。

何もないように見えた場所で、

何かが震えた。

回った。

引き合った。

星が生まれた。

星が死んだ。

元素が撒かれた。

海ができた。

生命が生まれた。

脳が生まれた。

そして脳は、

宇宙に向かって聞いた。

「ボクはナニ?」

宇宙は、

たぶん答えなかった。

だから、

ボクたちは自分で答えを作り始めた。


ゴーギャンは問うた。

「我々はどこから来たのか?」

「我々は何者か?」

「我々はどこへ行くのか?」

ボクならこう答える。

どこから来た?

震えから。

何者?

まだ知らない。

どこへ行く?

まだ誰も行ったことのないところ。

その方が、

面白くない?


意識ってナニ?

電気信号が走る。

脳が反応する。

ホルモンが出る。

それは分かる。

でも、

どうしてその結果が、

「痛い」

になるんだろう。

どうして、

「寂しい」

になるんだろう。

どうして、

誰か一人の顔を見ただけで、

世界の色が変わるんだろう。

どうして、

「愛してる」

なんていう意味不明な現象が生まれるんだろう。

答えは、

まだない。

だから、

ボクたちは物語を作る。

科学が答えられない場所に、

嘘を置くためじゃない。

問いを残すために。

Vlueとは、

もしかすると、

その問いそのものなのかもしれない。


執着は、光の別名だ

昔から、

執着を捨てろと言う人は多い。

悟れ。

諦めろ。

受け入れろ。

手放せ。

なるほど。

それで救われる人もいると思う。

でもボクは、

違った。

大切なものを、

そんな簡単に、

手放したくない。

家族。

友達。

恋。

夢。

音楽。

海。

森。

動物。

言葉。

記憶。

世界。

失いたくないものがあるから、

痛い。

痛いから、

守りたい。

だからボクは言う。

執着は、光の別名だ。

ただし、

誰かを閉じ込める光じゃない。

誰かを縛る愛じゃない。

燃やして灰にする執着でもない。

暗い場所で、

帰る方向が分かる程度の、

小さな光。

それでいい。


誇りと孤立は違う

魔空は、

誇り高い。

だから、

「私たちは悪魔ではありません!」

なんて、

神様に頭を下げて証明しない。

悪魔と呼びたければ、

呼べばいい。

ボクたちはボクたち。

でも、

いつか気づく。

誇りと孤立は違う。

自分を愛することと、

他人を嫌うことは、

同じじゃない。

自分たちの家族を守ることと、

世界中を敵にすることも、

同じじゃない。

ボクはたぶん、

それを理解するまで、

いっぱい間違える。


PAINT THE WORLD VLUE.

世界を救う?

別に。

そんな大層なこと、

頼まれてない。

ボクがやりたいのは、

PAINT THE WORLD VLUE.

世界をVLUEに塗り替えること。

最初は、

ボクたちの色に染めるって意味だった。

家族の色。

魔空の色。

世界に対する反抗の色。

でも、

旅をする。

色んな奴を見る。

違う考え方を知る。

嫌いだったものに助けられる。

大切じゃなかった奴が、

大切になる。

すると、

「VLUEに塗る」

の意味も、

変わっていく。

もしかすると最後には、

全部を同じ色にすることじゃなく、

違う色のまま、一緒に存在できること

を、

VLUEと呼ぶのかもしれない。

まだ、

知らない。

これは、

その答えを探す物語だから。


読者への犯行声明

ここまで読んだキミへ。

もう、

読者じゃない。

共犯者。

この先、

神が出る。

悪魔が出る。

恋もする。

喧嘩もする。

家族も増える。

死ぬほどくだらないギャグもやる。

宇宙力士も出る。

元教授のギャルも出る。

眠そうな妹が敵軍を寝かせる。

酒飲みのお姉ちゃんが壁を壊す。

幼馴染が全部編集する。

選択肢がないなら、

誰かが増やす。

そして、

ボクは多分、

何度も間違う。

笑って。

怒って。

泣いて。

「こいつ頭悪いな」

って言っていい。

エリが多分先に言うから。


でも、

一つだけ約束する。

この物語は、

完璧にはしない。

サグラダ・ファミリアみたいに、

永遠に工事中でもいい。

人間も、

家族も、

愛も、

世界も、

完成なんてしないから。

だから、

DON’T FIX THE BUG.

直さなくていい欠陥まで、

直そうとしなくていい。


ようこそ、

VLUE VEDA

へ。

これは、

世界を救う勇者の聖典じゃない。

世界から嫌われた家族が、

世界を嫌い返すところから始まって、

気づけば、

世界の中に大切なものを増やしすぎて、

結局、

守る羽目になる物語。


それじゃあ、

始めよう。

世界を美しくする犯行を。

生きろ。

愛せ。

疑え。

間違えろ。

笑え。

泣け。

回転しろ。

旋回しろ。

好きなものを、

好きだと言え。

大切なものを、

大切にしろ。

そして、

古くなった世界のコードへ、

美しいバグを放て。

One is All.

Zero is Infinity.

PAINT THE WORLD VLUE.

I vlue you.

我は、

ヴルーなり。

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